民法改正で変わるソフトウェア開発

ちょっと遅いですが、民法の改正案が2017年5月26日、参議院本会議で可決・成立しました。
(国会提出主要法案第189回国会(常会) 民法の一部を改正する法律案)
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可決・成立したので、この法律は、3年以内に施行されます。
この改正法で、ソフトウェア業界界隈で、気になったところを、意訳すると、

「プロジェクトが中途半端で終わっても、利用者が使っているなら、その分は請負人に払うこと(民法634条)」
「瑕疵担保期間は、1年目安だったけど、これからは、最大5年。(民法636条+民法166条1項+民法637条)」
(補足:契約不適合は、これまでの「瑕疵」に置き換えました。
民法166条1項の主観的起算点で、「最大5年」としました。)
とすると、ユーザは、プロジェクトが途中で中止されたものは料金を払わなくても使えていたものは、払うことになります。
元々、中止したプロジェクトの成果物に支払いが発生しないケースだと、ユーザが利用しないので、設計した内容をすべて破棄することになるはずです。
となると、仮に、プロジェクトが中止になっても、ユーザは自分の仕事(設計)が無駄にならない(担当者の貢献力を残す)ように、なるべくなら使えるものが残るようにすすめると思います。

受注側は、努力が報われるようなんとかユーザが利用できる製品を納めようとするので、プロジェクトが途中で失敗しても、使ってもらえるような進め方をするのだと思います。
とすると、両者とも、細切れで納品できる方法で落とし込むので、今回の改正は受注側の利益が守られ、より、マイクロサービス化が広がると予想しています。
(有効になった努力量が、お互いに報われるかと。)

加えて、「自由契約の原則」はあるものの、法律で、瑕疵は最大5年保証が必要なので、受注側が提示する契約で合意できない(=受注側の瑕疵担保期間の提示が合意されなかった)場合、その瑕疵の発生の有無に関わらず、その保証分のコストを確保して、発注者へ請求するはずです。
この請求分は、費用対効果が見込めないので、ユーザにうれしくありません。
そのため、両者の落としどころは、リスクヘッジを大きく取らざる得ないウォーターフォール型の契約をさけ、可能な限りは、スモールスタートでプロダクトを進めるのだろうと思います。
ユーザ主導の内製化が進むか、ユーザ主導は変わらず、プロダクトを小さくして、リスクを小さくするかだと思います。
今回の民法改正で、SI業界にとって、いろいろな部分(契約内容→アーキテクチャ→開発方法)で、大きな影響がありそうです。

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