「DICOM」とは

医療画像情報の通信で必ず出てくる「DICOM」と呼ばれる規格についてご紹介します。

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1)DICOMとは

DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine:”ダイコム”と読む)とは、医療画像情報の通信に関する国際的な標準規格のことです。
米国NEMA(National Electric Manufacture Associate)が中心となり世界中の医療機器メーカーやその利用者によって作成されています。
規格は常に修正や追加が行われており、毎年4月に過去1年分の修正と追加を組み込んだ規格書が公開されます。(原文は英語です)
医用機器や医療技術の進歩にともなって新たな情報や定義が追加されつづけているため、規格書全体は膨大なページ数となっています。
そのためすべてを把握して利用することは難しく、医療機器の開発者や利用者は自分たちが使いたいDICOMの一部分だけを理解して利用しています。

 

2)DICOMが定義しているもの

DICOMはTCP/IPをベースとして”ネットワーク通信”の方法と”データ”について定義しています。
“データ”は、患者情報、検査情報、シリーズ情報、画像情報といったグループから構成されています。
さらに各グループの下には患者名、患者ID、検査日時などの多くの項目が存在します。
これらの項目は一つ一つが”タグ”と呼ばれる識別子によって管理されています。タグはグループ(患者情報や検査情報といった分類)とエレメント(患者情報グループの中の患者名や患者IDといった個々の要素)で構成されており、それぞれが16進数4桁で表現されています。
たとえば、以下は患者情報グループに含まれるタグの一部です。

 (0010,xxxx) 患者情報グループ
 (0010,0010) 患者名
 (0010,0020) 患者ID
 (0010,0020) 患者の生年月日

また、DICOMはこれらのデータを送信する”サービス”についても定義しています。
“サービス”とはどのような画像や情報を扱えるかを分類したもので、同じようなサービスでも扱う画像の種類によって異なります。

3)DICOMを利用するメリット

ユーザーがとあるメーカーA社からDICOMを利用しない独自のルールに依存した医療機器を購入する場合、接続する他の機器のメーカーにはA社のルールに沿った通信手順や方式で開発を依頼しなければなりません。
当然その開発費用はユーザーである医療機関が負担することになります。
DIOCMのようにメーカーに依存しない共通ルールを利用すれば、このようなコストを削減することができます。
また、複数のメーカーの医療機器を相互に接続できる”接続性”が確保されることで、メーカーを超えて機器の自由な選択や組み合わせが実現できますし、装置の入れ替えや更新があっても同じルールで対応できる”継続性”といったメリットも期待できます。

4)DICOMの特徴

ここではDICOMの特徴の一部についてご紹介します。

コンフォーマンス・ステートメント(適合性宣言)

まず、DICOMに対応しているだけですべての装置と通信できるわけではありません。

装置間でDICOMのサポート範囲に違いがある場合や、DICOMが画一的なものではなく国や施設を限定しない規格であることからDICOM規格の解釈に違いが生まれ、データの受け渡しができないようなケースもあります。

(たとえば、画像データ受信装置が必須とするデータを<タグA>で受信すると定義していても、画像データ送信装置が<タグB>に格納して送信してくるような場合、受信側の装置は必須データなしのためエラーとなる)

そこでDICOMは、メーカーが開発した機器のDICOM対応を公言する場合、DICOMのどの部分に対応できるのか、そのサポート範囲の明言を求めています。
これはコンフォーマンス・ステートメント(適合性宣言)と呼ばれるもので、メーカーや販売会社は”DICOM適合性宣言書”としてホームページやユーザーからの問い合わせに応じて公開します。

ユーザーは医療機器を購入する前にDICOM適合性宣言書を入手して、自身のネットワークに接続可能な機器を選定することができます。

ただし、DICOM適合性宣言書の提出は義務ではないため、一部のメーカーでは装置の機能が不明瞭な場合があります。

また、DICOM適合性宣言書にすべての情報が記載されないこともあるため、万全を期すのであれば事前に接続試験を行うなどの対策が必要です。

 

既存の通信プロトコルが利用できる

DICOMはOSI参照モデルに準じる形で通信プロトコルを定義しているため、一般的なネットワーク規格をそのまま利用することができます。

実績のある既存のプロトコルをサポートすることはシステムの信頼性を高め、開発者の負担を軽減するのに役立ちます。

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